2022/05/19
アロマオイル、精油を使い始めたら必ず耳にする殺菌効果や抗菌効果についてです。どんな活用方法があるのかを実例や実験と一緒にまとめました。アロマオイルには薬剤を利用するのとは違った特徴があります。
前置きとして言葉の意味をイメージしにくいので簡単に意味を載せておきます。
殺菌について
この用語には、殺す対象や殺した程度を含んではいません。
完全に菌を死滅させるという意味で使われるわけではなく、菌の一部分を殺して機能を停止させるイメージでしょうか。
抗菌について
「菌の繁殖を防止する」という意味です。経済産業省の定義では、抗菌の対象を細菌のみとしています。JIS 規格でその試験法を規定していますが、抗菌仕様製品では、カビ、黒ずみ、ヌメリは効果の対象外とされています。
菌が増える活動を止めたり遅くしたりするという意味みたいです。
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アロマオイルが殺菌できるのはテルペン類のおかげ
いきなりテルペン類といわれても何のことかわからないと思うので
テルペン類とは
ルペノイドとも呼ばれる。主として植物中に含まれる天然有機化合物
中略
モノテルペンは炭素原子数 10の化学式をもつもので,主として植物精油中に含まれ,代表的なものとしてはショウノウ,メントール,ピネンなどがある。
天然有機化合物なので種類もたくさんあって幅広い用途に活用されています。
テルペンは、現在でも薬理活性、殺虫活性等、市場価値の高い物質が多く含まれているので、様々な分野で活用されている。
例えば、クスノキから得られる樟脳(カンファー)は、防虫剤、防腐剤、医薬品等として用いられていたり、合成樹脂セルロイドの可塑剤としても一産業を支える重要な物質だった。
中略
テルペン類の一種”ヒノキチオール”は、広い抗菌スペクトルを有し、抗菌活性にも優れており、医薬品をはじめ、防腐剤、殺虫剤等して多用されている。
テルペン類の全てに強力な殺菌作用があるというわけではなく、一部に殺菌や抗菌に優れている成分が発見されて実際の製品に利用されているのです。
なのでそのテルペン類の成分が濃縮されているアロマオイルには殺菌・抗菌効果が期待できるものが数多く存在しているのです。
活用例アロマオイルの抗菌・殺菌効果
では実際に私たちが生活の中で活用できそうな精油の殺菌・抗菌効果を実験と共に紹介していきます。
風邪の対策に使える
精油 は伝 統的 に鼻 風邪, の ど風邪 な どに用 い られ, 現在 で も風邪 専用 のブ レン ドした精油 が外国 では販 売 されてい る。
イ ンフルエ ンザ菌, 肺炎球菌,化膿性 レンサ球 菌, 黄色 ブ ドウ球 菌) に対 して も試験 した精 油 の活 性 は比 較 的 に高 い.
風邪や鼻づまり、肺炎のような呼吸器周りの不調には効果を発揮しやすいのです。冬場に一生懸命、マスクをしてのど飴をなめてもひどい風邪にかかってしまうという方は芳香浴を習慣にしてみてはいかがでしょうか。
また、安全性について心配される方もいるのですが、通常の状態では人体に影響を及ぼすものではないので安心してください。とりあえずはよっぽど大量に使用しなければまず大事には至りません。
一 方, 安全 性 について は, マ ウス に10μg/ml air で1週 間連続 曝露 させ て も, 異 常病理所見 は認 め られ なか った
肌荒れにも活用ができる
手足, 頭部 の白癬, 皮膚カ ンジダ症 な どが対象 にな り, レモング ラス, ユーカ リ,タイ ムな どが用 い られ る. 細 菌 性皮膚感 染 にはテ ィ トリー, タイム, ユー カ リの ブ レン ドが推 奨 されてい る.
中略
また, ア トピー性 皮膚炎 に も好 んで用 い られて いる.
ニキ ビの治療 も報告 されて いる
よくある皮膚の問題の水虫をはじめとしてニキビの改善にも利用できるのです。皮膚ケアの製品に精油が使われている物が数多くあるのも納得です。
腔内ケアや粘膜の不調への対策
3.粘膜感染症
粘膜, 特 に女性 の膣 カ ンジダ症 に対す るテ ィ トリーやイニ ュラの芳香 水, テ ィ トリー, シナ モン, オ レガノのペ ッサ リーや油製 剤 の局所適 用 が効 果 をあ げて い る(42).中略
精油 を用いた臨床 実験で, 歯 垢の減少, 炎症 の低下, 歯肉炎 の改善 な どが報告 された(46). 1,000症例を越 える口腔 の臨床結果 も報 告 され てい る
粘膜のトラブルといえば鼻炎もありますね。かゆみとか炎症を弱めるのもアロマオイルの得意分野です。
口の中をきれいに保つのにもうがいなどで一役買ってくれます。歯医者さんで精油を推奨しているところもあったりします。いくら消毒したくても、口の中に塩素を入れるわけにはいきませんからね。
機密状態にした箱の中での芳香実験で
ラベ ンダー, シソ, レモ ングラス,タイム油 な どは, 胞子 の発芽 と菌糸 の先端成 長作用 をほぼ同一濃 度 で抑制 す る. 精油 の中で は, 一般 に フェノール, アル デ ヒ ド系 が最 も抗菌活性 が高 く
カビの増殖を抑制する
図 3の実験によりテルベンの蒸気でカビに対する増殖抑制のあることを確認した
内容はハッカを染み込ませたろ紙と培地上の胞子液とを同じ容器に入れてふたをして観察をする実験でした。
タンスやお風呂場のカビ取りが終わった後に閉め切ってハッカの香りを炊くと取りきれずにカビが残っていてもカビが生えるのを防ぐのに利用できそうです。
ダニも追い払う
まずハダニに対しては,Mansouh(1986 )がラベンター,メリッサ, 西洋ハッカ,サルビアー,ローズマリーなど14種類のシソ科の植物の精油が強い殺ダニ,忌避活性を示すことを明らかにしている.
中略
テルペンの中で,例えばハッカ油をろ紙の上に5μℓ以上入れてやると,ヤケヒョウダニは24時間後の観察で100%致死することを確認した。
また,その後の実験で,密閉容器内ではテルペンの濃度を下げていくと,殺ダニ効果ではなく増殖抑制効果を示すことを確認した.
観葉植物のダニ対策として薄めてスプレーに使ったり、押入れのダニ対策に入れておくのも便利です。
アロマオイルで殺菌・抗菌をする利点は?
薬剤で殺菌するのと何が違うのか分からないという方のために簡単な違いを挙げてみました。
濃度が低くても抗菌できる
MIC値とはその抗菌剤が抗菌力を発揮するのに必要な最小の濃度のことで
抗菌剤をある一定の濃度まで固体または液体の培地で段階希釈し、試験菌を接種して培養後、発育の有無を確認することで菌の発育を阻止する抗菌剤の最小濃度を求めます。
抗菌剤が試験菌の発育を阻止する最小の濃度を測定する試験より引用
MIC値が最も低かったのはレモングラス精油で,0.05~0.17%であった.
中略
また,アルコール類の1つである消毒用エタノールは通常76.~81.4v/v%で用いられ,たんぱく質変性により抗菌力を発現
中略
同様にペパーミント精油のアルコール濃度は全体の0.44%となり,消毒用エタノール使用濃度の185分の1の濃度となり,消毒薬と比較しても抗菌効果が高いと考えられる.
植物精油の口腔微生物に対する抗菌性及びバイオフィルム形成抑制効果の検討より引用
消毒用アルコールよりも低濃度で効果を発揮するのでうまく使えばコスパが良さそうです。
肌荒れを起こしにくい
一般的な消毒用の薬剤をしようするよりはゆっくりと効果が出るので肌に負担をかけにくいです。
耐性菌が出ない
抗生物質の話でよく言われますが、殺菌が必要だからといって何度も同じ薬剤に頼って解決しているとそこに生息して殺しきれなかった菌がその薬剤に対して強くなっていく現象です。
最終的には耐性ができて薬が効かないということも起こりうるらしいです。
精油由来の成分を利用して殺菌するとそれが起こらないといわれています。
普段はアロマオイルで殺菌しておいて、どうしても薬が必要なときには薬剤で殺菌するのが賢い使い方かと思います。
アロマオイルは抗菌作用が高いのでどんどん活用していきましょう。